神父様からのメッセージ

「聖夜」

 その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れをしていた。すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日、ダビデの町で、あなたがたのために救い主が生まれる。この方こそ主メシアである。(「ルカによる福音書」2・8-11)

 救い主メシア誕生の知らせが、町の人々ではなく、野宿をしていた羊飼いたちにまっさきに伝えられたということは、考えさせられることではないでしょうか。羊の群れを世話しながら、生活を支えていた彼らは間違いなく貧しい人々でしょう。家に住んでいるわけではないので、手や顔を洗ったり、服を着替えたりすることもできず、汗と埃にまみれていたのではないでしょうか。夜通し羊の番をすることも、楽な仕事ではありません。できることなら、あたたかな布団にくるまり、ベッドで寝ていたかったかもしれません。

 ところが、神はそのような彼らに天使を遣わし、救い主キリストの誕生を知らせるのです。それは、日々の生活に追われ、生きることに疲れていた彼らに、救い主誕生を知らせ、彼らに希望を与え、励まそうとされたのではないでしょうか。彼らこそまっさきに救われなければならないからです。まさに「暗闇に住む民は大きな光を見、死の陰の地に住む者に光が射し込んだ」のです。

 現代も状況はまったく変わらないように思います。文字通り野宿するホームレスの人々ばかりでなく、一見、何も問題のないように見える人々の中にも、会社や学校や家庭での生活に疲れ、希望を失い、暗い夜を過ごしている人が大勢いるかもしれません。そのような人々に、神は救い主の誕生を告げられているのです。

 今年も、クリスマスが全世界で祝われます。キリスト教を信じようが信じまいが、救い主の誕生が告げ知らされているのです。これは、実に不思議なことです。どうかすべての人が、羊飼いのように天使の言葉を単純に信じ、ベツレヘムに行き、飼い葉桶に寝かされている幼子キリストを見いだすことができますように。

パウロ 九里 彰 神父